ボトックス注射の前に 大切なコンサルティング

なぜ まずは コンサルティング なのか

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ボトックス注射は、医師が行う一般的な概念の医療とは違う、と私は考えます。その根拠は、ボトックス注射が「対症療法」であり、「根治療法ではない」点にあります。眼瞼痙攣を根本的に治癒させる治療は現在のところ、存在しません。片側顔面痙攣を完全治癒させるのは、脳神経外科手術です。ボトックス注射は、一時的に症状を緩和するだけで、薬効が減少するとともに、症状が復活します。そして、ボトックスを繰り返し注射することになります。

例えとして、頭痛外来を考えてみると、よいでしょう。頭痛を完全治癒することはできません。頭痛を軽く、発作の頻度を少なくするために、医師は投薬を工夫して処方します。(余談になりますが、海外では頭痛・片頭痛の予防目的でボトックス注射が用いられています。)前回処方した薬が有効であったか、否か、本人が使いやすかったか、否かを確認して、修正していきます。医師があらかじめ決めた処方を押し付けるのではなく、ひとりひとりの患者に処方内容が合っているかどうかが大切な判断基準となります。当たり前のことですが、全員にほぼ同じ処方をしているわけではありません。

私は、ボトックス注射も同じに考えます。定型のパタ-ン通りに、医師があらかじめ決めた通りに毎回同じ注射をすればよいのでしょうか。私は、施療を受ける方々が「良い。さらに良い。こうしてもらえないか。」と、思う方向にボトックス注射を修正していくものだと考えます。しかしながら、申し上げておきます。これは大多数の意見ではありません。「ここをもう少し工夫して注射してほしい」と嘆願しても、受け入れられないことがあります。私は、実際に自分の顔面にボトックスを注射される方と詳しく打ち合わせをして、そのお考え、ご意見を十分に理解したうえで、ご意見を反映した注射をご提供するやり方を採用しています。初診のときにコンサルティングをしても、毎回の注射の直前に質疑応答しなければ、意味はありません。これは、ただ注射するだけよりも、ずっと多くの時間を要します。長年通っていらっしゃる常連の方と昔話をすると、このやり方が正しかったと確信します。病気の状態がいつも同じということなどありませんし、前回投与したボトックスが、各部位において過剰なのか、ちょうど良いのか、不足なのか、を確認してからでなければ、最高の施療はできません。

また、なによりも大切なことは、注射を受けた方が、どのように感じ、考えたか、であり、それを優先すべきです。(ボトックス注射とは、対症療法です。)受診とは、医者に診てもらうことです。受付を済ませたあと、医師に会うのが施術台の上、すぐさま顔に注射、というやり方では、最高の対症療法をご提供することは不可能と私は考えて、実際に配慮・工夫しています。施療を受ける方に、さらに良い結果を喜んでいただきたい、と目指すならば、毎回のコンサルティングは外すことはできません。「さらに、もっと良くできるのではないか」と常に考えて工夫しなければ、容易にその位置で停止してしまいます。逆の言い方をすれば、「ボトックスを注射して良くなっているんだから、これはこれで十分でしょう。」と医師が考えて停まってしまえば、コンサルティングなど時間の浪費、不採算医療部門になることは間違いありません。

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